孫正義の焦燥(大西孝弘著)の感想

少し前に、
大西孝弘著の「孫正義の焦燥 俺はまだ100分の1も成し遂げていない」を読みました。

日経BP社発行で、日経BPに連載されたものを書籍にした作品です。
第1版の発行が2015年6月です。

book-cover

私個人の感想としては、読んで良かった、と思える作品です!

内容は、大西孝弘氏の視点で、
孫正義という人間がどう生きてきて、どう判断してきたのか、そういったことが描かれています。

もともとは孫さんの著名でコラム掲載を打診したようですが、孫さんは現役中は自分の名前で著作はしない、と決めているようで、
(現役のボクサーはボクシングするのが仕事、経営者は経営するのが仕事といった考え方のようで)
大西氏が孫さんを追って、随時インタビューした内容を、大西孝弘著で執筆する経緯となったそうです。
(あとがきに孫さんとのやり取り含め、記載されてます。

本は確かに大西氏の視点で描かれていますが、非常に孫さんに近いところでの見え方、言葉なのですね。
なので、孫さんの考えに触れられる一冊だと思ってます。

章立てですが、

第1章 ロボット「ペッパー」誕生の舞台裏
第2章 アメリカの夢と挫折
第3章 盤石の国内事業に忍び寄る大企業病
第4章 情と理に揺れるエネルギー事業
第5章 急成長を支えるストリートファイターたち
第6章 1000年のタイムマシン経営
第7章 ニケシュは孫正義2.0になれるのか

といった感じになってます。

途中、簡単に生い立ちなどにも触れますが、
基本的には直近での事業経営の分岐点や判断などに迫っていて、
まだ記憶に新しいニュースと一緒にその決断に至るまでの話や裏話などを知ることができます。

iPhoneについて、ペッパーのリリース直前のドタバタ劇、
スプリント買収の裏話、その後のアメリカでの失敗、
東日本大震災後のエネルギー事業へ邁進した時の葛藤、
そして孫さんを取り巻く敏腕たちの話など、全部で300ページほどですが、あっという間に読めました。

それから、巻末に柳井さんの「孫さんについてのインタビュー」掲載もあります。
柳井さんというのは、かのファーストリテイリングのあの柳井正会長です。
ユニクロやGUというと分かると思いますが。2001年からソフトバンクの社外取締役だそうで。

あまり細かく書いても何なので、
最後に、孫さんの言葉で面白かったものを1つ。
チンギス・ハンについて。
チンギス・ハンは野蛮で皆殺しばかりして、ユーラシア大陸に大きな帝国を築いた印象ですが。
孫さん曰く。(簡単に要約しますと。

チンギス・ハンは攻めて城を囲んだら、全員皆殺しにする、って脅しをかける。
でも、降参するなら許すぞ、と。土地も民も地位も全てそのままでいい。
ーえ?優しいじゃん。じゃあ、何を獲るんですか?
塩と銀、この2つだけは全て差し出せ。
ー皆殺しか2つを出すか、なら、後者を選ぶ。

てな感じで、あちこち攻めては、塩と銀。
野蛮で凶悪のような噂があった分、その2つを諦めて今まで通りなら、その方が良い、てなる。

で、どんどん攻めては、降参していく。
戦うといっても365日戦ってるわけじゃない。むしろ走ってる時間の方が長い。
そうなれば、汗をかく。塩分が不足する。
塩がないと戦うどころか、生きるのもままならない。
だから、塩。
塩はあちこちから召し上げてるから、大丈夫。

で、いざ、戦って、よくやった、さ、褒美の塩だ。って塩なんか出したら、
ーえっそれ、それっ? てなる。
だから、銀。
命かけて戦って塩じゃ割に合わないけど、銀ならそれに見合う。

汗の対価、つまり労働の対価が塩、命の対価が銀。

なるほどー。
実際にはもう少し細かく、面白く書かれてますが、
いやはや、自分の中にはなかった考え方というか、見方、捉え方ですね。
歴史や事柄、人物もそうですが、見方を変えると、また違った発見に繋がります。
パラダイムシフトですね。

こんな感じで、孫さんの言葉や行動から色んな考え方にも触れられます。
ちなみに、このチンギス・ハンの話の続きは、

日本のサラリーマン、兵隊は、塩しか与えられない。
死なないように塩ばっかりなめてる、だから元気が出ない。
塩しかもらってないのに精神論だとか言われる。
塩もらってるのにそれ以上求めるなんて武士の風上にもおけない、と。
現代で言うとストック・オプションは銀で…

といった感じで、現代にまで視点を広げています。

孫さんについての著書は他にもたくさんあるので、少しずつ読んでいきたいと思います。
以上、「孫正義の焦燥 俺はまだ100分の1も成し遂げていない」の感想でした。

 

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